なみえびと

2018-02-19

〜大堀相馬焼-松永窯3代目を訪ねて〜

創業は元禄 、庶民の器として愛され続けた大堀相馬焼。

古い窯元で15,6代、300年以上の歴史を持つ大堀相馬焼。浪江町大字大堀の一帯で作られたこの焼き物は、庶民の器として長く愛されてきました。同時期に作られていた相馬駒焼は、お殿様だけが使うことを許されていた献上品。また、一子相伝だったため途絶えてしまったのですが、大堀相馬焼は、特産物にすべく相馬藩からの援助もさかんに行われた結果、江戸末期には100を越える窯元が生まれていたとか。海外貿易の贈答品としても盛んだった頃、はじめられたのが松永窯で、和生さんご夫妻はその3代目。そんな長い歴史を持つ大堀相馬焼、その作る工程を見せて頂きました。

二重焼きはこうして作る!!

まずは材料となる土の準備から。もともとは浪江町の井手の山で掘った土を使っていたそう。焼き物は陶器と磁器に分かれますが、大堀相馬焼は半磁器。中の空気を抜く土練機という機械を使って練ります。その土をろくろで回し、器を作ります。なんと大きさの違う器を2つ作るんです!そしてなんと重ねます!!この二重焼は、たまたま器の捨て場に捨てた器同士が重なってしまったころからヒントを得て誕生したとかしないとか(諸説あります)。

あの模様はなんとハートじゃなかった!

重なった継ぎ目を整えたら、これまた大堀相馬焼でお馴染みのあの模様を、その二重の部分にくり抜きます。そう、ハート型。

「波の上の千鳥ね」
「え?!そうなんですか?!

そういえば、波線もある!「これが波でその上の千鳥なんだよ。でも海を知らない人にはわからないよね。桜やハートの模様って言ったほうがわかりやすいよね。

取材の時には、浪江町役場の職員の方もいらっしゃいましたが、浪江出身の方もみんな桜やハート模様だと思っていたらしく、一同驚きでした。

いよいよ馬の絵付けへ。 松永さんの筆さばきをご覧あれ!

模様をつけて成形し、乾燥させたら素焼します。素焼の後はこれまたお馴染みの馬の絵付けの工程へ。吸水性の高い素焼の器に、鉄を含んだ石を砕いたものを溶いて、絵付けをします。この馬の絵は「走り駒」、別名「左馬」と呼ばれ、それは「右に出るものがない」という意味から縁起物として親しまれているものだそう。そういえば、逆向きの馬は見たことない!

震災後、何度も試行錯誤して再現。青ひびをもたらす「釉薬(うわぐすり)」

絵をつけたら、釉薬をかけます。釉薬(うわぐすり)を変えることで、緑やピンク、黄色などいろいろな色に焼きあがります。釉薬の種類は2〜30種類はあるとか。中でも大堀相馬焼の特徴は青ひびですが、これも青ひびが出る釉薬によるもの。浪江の高瀬川渓谷にあった土から釉薬を作ると自然に青ひびが生まれていたのだそう。それも震災以降できなくなり、何度も試行錯誤して再現されたのが今の釉薬だとか。

これだけを聞きに行っても損はない!! 死ぬまでに聞いておきたい「大堀相馬焼がひび割れる瞬間の音」

釉薬を塗って窯入れし、焼きあがる瞬間に神秘的な出来事があります。それは、青ひびが入る瞬間。釜から出した後から徐々にひびが入ってくそうなのですが、そのときになんとも美しい音を立てるのです。その美しさを捉えた動画がこちら!音の美しさを特集する番組などで取り上げられることもしばしばとか。これはぜひ皆さんにも生で聞いてもらいたい!

さらなるクライマックスが「墨入れ」

まだ、何かが足りないと思いませんか?ひび割れてはいるけど、透明!そう、青色のひびにはこのままではならないのです。ここからどうして青ひびになるのか。なんと!墨入れという最後の工程があるのです。この美しいひび割れをくっきり見せるために、墨汁を刷り込むという手作業。とても手間がかかるこの作業を見せて頂きました。

完成するまで約1ヶ月。こうして生まれるたったひとつの器。

完成するまで約1ヶ月。そして、この美しいひび割れは一つとして同じではなく、窯出しから1週間ほどかけてひび割れが進み、この美しさになります。そして、最後はこの墨入れという手間のかかる作業。自然が作り出すたったひとつのこの模様、それを際立たせるのはひとつひとつ丁寧にすり込まれたこの墨入れ。これを知ったら、ちょっとひとつ手元に欲しくなってしまいませんか?

 

そんなあなたに朗報。大堀相馬焼「春の新作展」が東京にやってくる!

昔ながらの「馬の絵・青ひび・二重焼」以外の新作も手がけていらっしゃるのが松永窯さんの特徴。最新作にはこんなおしゃれなものも。松永窯さんをはじめ、大堀相馬焼の窯元さんの新作が見られるイベントがなんと東京、そして福島空港で開催されます。贈り物に、普段使いに、ひとつ買い揃えて見てはいかがでしょうか?東京のイベントでは、福島の他の地域の生産者を招き、ご当地グルメやトークショー、ワークショップも。先ほど紹介した大堀相馬焼の絵付けや墨入れ体験もできますよ。なんといってもあのひびが入るときの音を生で聞いてみたい!という方は、ぜひ松永窯の陶芸体験にお越しください。

 

<イベント概要>
❏大堀相馬焼 春の新作展@東京
〜ふくしまの今を、見て、食べて、感じる。「福ハウス」〜

日時:2月23日(金)〜3月1日(木)  平日11:00~21:00 土日祝10:30~18:00
場所 :HamaHouse(ハマハウス) 〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町3-10-6
 詳しくはこちら  http://hamacho.jp/hamahouse/2018/01/19/fukuhouse/

❏大堀相馬焼 春の新作展@福島空港
日時 3月2日(金)〜3月4日(日)  10時〜17時(最終日は16時まで) 入場無料
場所 福島空港 2,3F 特設会場
 詳しくはこちら

<オンラインショップはこちら>
・松永窯オンラインショップ  http://somayaki0716.shop15.makeshop.jp/

<陶芸体験などお問い合わせはこちら>
 http://soma-yaki.com/contact/contact.html