グルメ
2019-12-27
うどん屋でインスタ映え…?
国道6号線から114号線に入り、西へ向かって一つ目の信号(麺屋龍次となみえ肉食堂がある交差点)を右に曲がるとすぐに、「うどん」と書かれたのぼりに気付く。矢印の指し示す通りに進んでいくと、白いコンテナハウスにオレンジの大きな文字が目に飛び込んできた。
12月21日、新たにオープンした讃岐うどんや丼ものが食べられるお店「西内食堂」だ。
まだまだ働き盛りな61歳。無邪気な笑顔は、年齢よりもっと若い印象を受ける。
駐車場でまず驚かされた「うどんを食べて笑顔になろう!」という看板に、あれはなんでしょうか?と思わず尋ねてしまった。
そんな失礼な聞き方をしてしまったにもかかわらず「インスタ映えでしょ~!!」と、満面の笑顔で一言。
まさに有言実行とはこの事かもしれない。
これまでの経験があってこその今
学さんは東京の大学を卒業後、飲食業界へ就職。様々なお店で経験を積む中で、ふっと立ち止まった瞬間があったという。そんな時に出会った1本の映画の影響を受け、1年間休職すると同時にアメリカへと飛んだ。「どうせなら」と、そこから世界一周の旅へと舵を切った学さんの人生観は大きく変化した。
帰国後は元の職場を退職し、某大手カフェへと職場を変え、数年後には東京・大阪で店長を務めた。自らの成長をストイックに追及するかのように、その後は様々なジャンルの飲食業界を経験し独立を果たした。
「経営はとにかくセンスが大事。」と、これまでの人生を振り返った。
もちろん失敗もたくさんしてきたことだろうが、そうした弱みや隙を感じさせないブレない価値観がある。
過去の記憶と共に、明日へ向かって
学さんには震災以降浪江町を離れている家族がいる。「いつか浪江町へ帰って来たいんじゃないかなと思っていて、ならば、今からそのきっかけを作っておきたい。」というタイミングが、自身の人生のターニングポイントと合致したのだ。
「年配の方が多い…つまり年配の方からのニーズがあるということ、ほっこりできるような食べ物であること、そして今の浪江町にないもの—。それがうどんだった。」
西内食堂に集まる方々が皆ほっこりと、美味しさに舌鼓を打ちながら会話に花を咲かせて笑顔がこぼれる光景が目に浮かぶ。
▲震災前、この場所には母屋が建っていた。学さんが子供の頃、その母屋で使われていた思い出のあるストーブが、店の中心でお客さんを迎える。
「おうどんいかがでしたか?味はどうでしたか?」
ランチタイムで店内は満席。厨房から出てきた学さんは1人1人に丁寧に声をかけ、そのうちに世間話が始まった。
「40年ぶりに浪江町に帰ってきたのに、不思議なもんだ。知っている人ばかりだよ。」
この日最後のお客さんは、母親と娘と見られる2人組。しっかりボリュームのある海鮮かき揚げうどんをぺろりと平らげ、学さんと地元同士でないと分からない会話で盛り上がり笑顔で帰っていった。
▲明るい店内、ほっとする空間が広がる。2人のお母さんがホールを切り盛りしている。
「ここでは、誰かしら知合いに会うことができる。そんな場所になって欲しい。」と語る。
「今後も店にどんどん手を加えて、より過ごしやすいお店にしていきますよ。皆さんに気に入ってもらえるといいな。」
お気に入りのキャップと白衣に身を包み、明日への仕込みが始まります。
▲Reykjavik(レイキャヴィク:アイスランドの首都)の刺繍入りのキャップは、これまでの人生を共に過ごしてきた。
〈営業時間〉
11:00~15:00
毎週月曜/月末の火曜
▲海鮮かき揚げうどん¥680リーズナブルさも魅力。
▲カフェのようなソファ席もあり、ゆっくりくつろぐことができる。