お土産

2021-03-11

震災…そして再開

東日本大震災後東京へ避難し、同年5月中旬に福島県へと戻ってきた。それから一年半後の201311月には、現在の工房で再出発を果たした。建物はプレハブの仮設工房、しかし一歩中に入ると所狭しと陶器が並び迫力ある大皿が出迎えてくれた。

2012年頃、ある窯元が白河市内で再開に向けて動いていることを新聞で知り、仲間がいるこの地で山田さん自身も再開をしようと決めたという。それから約9年間仮設での営業を続けてきたが、ようやく20215月頃には、本設の工房が完成する予定である。

いかりや商店の歴史をたどると、先祖は宿屋(米の配給や田畑を貸したりする仕事)を営んでいた。相馬のお殿様が立ち寄った時に、「何かあった時に、この場所にとどまれるように」という思いを込め、錨(いかり)という屋号をもらったそうだ。

名前が分かる範囲でも山田さんは13代目、職人家系の歴史は長い。


▲力強く勇ましい姿の走り駒

こだわりとコンセプト

陶器などの職人というと、職人が作りたいもので魅せていくという印象が強いが、いかりや商店はお客さんの声を聞いて作ることが多いという。

「希望に合わせた、お客さんが使いやすいもの・欲しいと思うものを作る、ということをしてきました。一つ一つの仕事に手を抜かずに、生産性度外視で、時間をかけて最後まで丁寧にやるというのが私のやり方です。」

ユニバーサルデザインのように、これと言って際立った特徴がないのに、なぜか使いやすい…そんな陶器には、職人の隠れた「技」が効いているのだ。

最近では、地元の人のからも相談も多く、要望があれば前向きに応えたいと考えている。

試作中の馬の箸置きを見せてくれた。

一番右が焼く前の色、左の三頭が素焼きの状態のものである。欧風デザインを思わせるものや、木製のように見えるものなど、質感が一緒でも印象が全く違う。

「手間を惜しむと、いいものはできないね。震災前はちょっと面白いものを作る余裕があったけど、この10年は無我夢中だった。とにかく進むしかなくここまできた。いままで遊び心がなくなってたかもね。」

「なみえの技・なりわい館」への期待と希望

地場産品販売施設「なみえの技・なりわい館」のオープンは、自分たちにとっては大切な事だと言います。

「震災以降、浪江を離れてしまって、町との繋がりがこのまま薄くなってしまうんじゃないかって思ました。」

震災から10年。ようやく大堀相馬焼協同組合が町内での再開を果たす。

「本当に待ち望んでいました。この施設ができる事で、次の代、そしてまたその次の代へと、この伝統と技術を引き継げることができるようになります。」

大堀相馬焼は、浪江町にとって大きな産業の一つである。

それを受け継ぎ、後世へときちんと残しておかないといずれ消えてしまうのではないかという不安を抱く。

「浪江を離れて、時間と共に薄れてゆく想いを繋ぎとめてくれる場所になればいいなと思います。」

自宅は未だ帰還困難エリア。「なみえの技・なりわい館」が、これから山田さんにとって「帰る場所」になるのだろう。

「学生の頃やってきたことを思い出して新作を作ったり、浪江町をイメージできるようなものを作りたいし、引き出しを広げてデザイナーさんとのコラボをしたり、新たな挑戦をしたい。」と、これからさらに精力的に活動したいと語る。

一つの器に懸ける想いと探求心。

ズシリと重く、飾って目で楽しむ大堀相馬焼もいいが、極限まで薄く軽く、それでいて強度は高い、そんな日常使いできる大堀相馬焼も楽しんで欲しい。

▲柔らかく軽いが強さも兼ね備えた器 色合いが美しい

【いかりや商店】
〒969-0308
福島県白河市大信増見字下川原11-7
定休日:不定休
営業時間:10:00~16:00
℡0248-22-5080

20215月上旬以降は、下記に移転します。
〒969-0872
福島県白河市池下33


2021320日(土)オープン!!

酒蔵と大堀相馬焼『なみえの技・なりわい館』
▶大堀相馬焼工房&ショップ
10001700 ※毎週水曜定休
お問合せ:大堀相馬焼協同組合℡0240-35-4917

▶酒Bar&ショップ Sake Kura ゆい
10001800 ※毎月最終水曜定休

道の駅なみえHPリンク